作家志望の不定期ブログです。
無色の翼、鳥は何処に向かうのか?
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第九夜 瞳
2012-04-12-Thu  CATEGORY: 小説:メアのゆりかご
また一枚描いていただきました。
小夜子&実乃里です。

見てください、小夜子が地味じゃないwww
じゃなくて可愛いです。

羽桜さん、今回もありがとうございます。

20120331174612ff2.png

・Prologue
・第一夜 白夜の世界
・第二夜 異世界の現実
・第三夜 届かない想い
・第四夜 絶望と覚醒
・第五夜 友と共に生き延びるために
・第六夜 夢の最果てで
・第七夜 忘却に潜む闇
・第八夜 愛ゆえに
・非現実の座談会



メアのゆりかご
第九夜 瞳



初めて白夜の世界で空を見上げた時は、嘲笑うような三日月だった。
音緒が漆黒の月を切り裂いて現れた時は、ふくよかな半月になっていた。

あの不気味な月が徐々に満ちていたことには気付いていたが、一体いつの間に満月になっていたのだろう。しかも、初めに見たよりも肥大化しており、通常の月の十倍以上の大きさになっていた。
漆黒の月を見ていると不快感が湧き上がる。満月となった今、その不快感は最高潮に達していた。

「そ、そんな……、間に合わなかったの……?」
「音緒、あの月は一体……?」

月を見上げて顔面蒼白になっている音緒に尋ねた。
あの月は確かに不気味で、白夜の世界の出入り口ともなっている場所だ。しかし、満月となることにどれだけの意味があるのだろうか。

音緒の様子からだと、あの満月にはとても大きな意味があるように思えた。それも、最悪の展開が待っている気がする。

「……む、むぅ、あれは……」
「瞳だ」

言い淀んでいた音緒の代わりに、礼夢がそう答えた。
ヒトミ……? それは一体どういう意味なのだろうか……?
私の表情に浮かぶ疑問に答えるように、音緒が話の続きを紡いだ。

「言葉通りの意味なの。目、眼球、瞳孔、そういったモノ……。信じられないかもしれないけど、あれは瞳なの……」

漆黒の月がグリッと眼球運動のような動きで白い空で回転した。左右に移動し、上下に移動し、まるで辺りを確認している瞳の動きのようだ。
まさか、あれは本当に瞳だというのか。そんな馬鹿なことを信じられるはずがない。

「瞳って……? 仮にそうだとして、何でそんなモノが空に……?」
「むぅ……、あれはそもそも空じゃない……」

嫌な想像が脳裏を過ぎった。
あの黒月が瞳であるとするなら、瞳周囲にある白い部分はつまり……。
恐ろしい考えに至り、耐え難い悪寒が全身を駆け巡った。

「……私達がいるこの場所、白夜の世界というのは、すなわち巨大な悪夢の眼球の中にある……。数百年前、夢幻界で最大勢力を誇っていた悪夢達の王。何百人もの犠牲を払っても封印することで手一杯だった悪夢。……武曽の狙いは、この悪夢王の封印を破ることにあった……。だから、この巨大な悪夢の中に潜り込み、更には結界まで張って私達の侵入を頑なに拒んでいた」

「あの月が元々欠けていたのって、その封印とやらのせいだったの? どうして、そんな大事なことを教えてくれなかったの!」

「教える時間も意味もなかった。知っていたとしても悪夢王が復活してしまえば私達に出来ることはないし、教える時間だって惜しかった。けど、武曽を倒せたというのに、こんな結果になるなんて……」

音緒は苦渋に満ちた表情でそう言った。
その衝撃的な内容に私は思わず後退りした。あの薄気味悪い瞳から少しでも離れたかった。しかし、今私達が立っている場所こそが眼球の中だった。つまり、どこに逃げようとも意味はなかった。

音緒や礼夢がしきりに空を気にしていたのは、そういう理由だったのか。ようやく合点がいった。

「悪夢王、メイアーハザード……」

音緒は遥か頭上の月を見上げながら、その名を呟いた。
メイアーハザード、それが今私達を体内に取り込んでいる巨大な悪夢の名だろう。夢幻の民によって封印された悪夢達の王。

「あんなモノが目覚めたんだ。外からの助けは期待できないな」

「ちょっと、それじゃあ私達はどうなるよ? まさか、ずっとこのまま悪夢の中にいろって言うの? 冗談じゃないわよ!」

「……それに、実乃里や他のみんなはどうなるんだ? もう助けられないのか……?」

クレパス側にいる礼夢達が口々にそう言った。
せっかく武曽を倒したと言うのに、悪夢王が復活してしまった今、その苦労は全て水の泡と化してしまった。重苦しい絶望感に圧し潰されそうになる。

漆黒の月がまた不気味な旋回をする。動きが徐々に活発化しているようだった。

これから私達はどうすればいいのだろうか。音緒はこの状況を避けるために行動していた。だから、悪夢王が復活した今となってはもはや打つ手がなかった。

私達は成す術もなくその場に立ち尽くしていた。
誰もどうすればいいのかわからない。

そんな状況の中、突如として地面の亀裂が広がった。
何の前触れもなく崩落した地面には礼夢達がいた。彼等は咄嗟に逃げ出そうとしたが、それでも崩れ落ちる地面の勢いの早かった。それとも何か別の要因でもあったのだろうか。礼夢達はあっという間に、亀裂の底へと引き込まれていった。

「……れ、礼夢!! 近衛君!! レオノーラ先輩!!」

私が我に帰った時、すでに亀裂の広がりは私達の目の前にまで達していた。

これはさすがに予想外の事態だった。悪夢王復活という最悪なタイミングで礼夢達が崩落に巻き込まれるとは思ってもみなかった。
だが、一番の予想外は……。

「さて、これで邪魔者は消えたか……」
「む、武曽……。まだ生きていたの……?」

クサナギの一撃によって塵一つなく消滅した武曽が、まるで何事もなかったかのように元の姿に戻って私達の背後に立っていた。
私が武曽の存在に気付いた時はすでに、音緒は彼に捕らえられていた。

「先程お前達が倒したあれは私が生み出した幻影だ。悪夢王メイアーハザードの復活までの時間を稼げればいい私が、わざわざお前達と戦う理由などないからな。時間稼ぎの駒だったのだよ、あれは。まぁ、まさか倒されるとは思ってもいなかったがな……。さすが我が弟子。いつも私の予想を超えてくれる」

「むぅぅ……」

音緒を背後から抱き締めながら、武曽は誇らしげに言った。
拘束されている音緒は抵抗をしているようだが、完全に背後を取られていて、まともな抵抗は出来ずにいた。

「さぁ、これでようやくチェックメイトだ、国崎小夜子。常盤実乃里、近衛真という友人達の守りを失い、あの邪魔な真城礼夢も消え失せた。そして、私にとって最大の障害だった音緒も今こうして捕えた。もはやお前の守りは全てなくなった」

武曽が音緒を拘束したまま一歩詰め寄ってきた。
眼鏡の奥に潜む邪悪な双眸が真っ直ぐ私を捕えていた。
私は追い詰められた。しかし、何故追い詰められたのかわからない。
武曽の目的は、悪夢王を復活させることではないのか。それを達した今となって、何故私を追い詰める必要があると言うのか。

「私の真の目的を達するためにお前の力が必要なのだよ、国崎小夜子。そのために夢幻の民を裏切り、この場所を用意した。若干の計算違いはあったが、それでもお前は私の手中に納まる。もう誰も私の邪魔は出来ない。これで私の完全勝利だ」

悪夢の手が目の前に迫ってくる。
この手に触れはいけないとわかっていても、私の身体は恐怖によって凍り付いていた。
私の意識はその手に掴まれた瞬間、電源が落ちたように途切れた。




















一方、崩落に巻き込まれた礼夢達は、巨大な濁流の中にいた。
あの亀裂が広がって崩落が始まった瞬間、彼等は当然反応が出来ていた。しかし、彼等の足を黒い影が掴んでいたのだ。完全に不意を突かれた形であったため、本来彼等にとって大した脅威にならないナイトウォーカーに文字どおり足元をすくわれてしまった。

崩落した先には、巨大な赤き濁流があった。
それまで彼等がいた白夜の世界が悪夢王の眼球にあったのなら、その下にある赤い濁流は血管だった。

鮮血の大河に落ちる前に、レオノーラが能力を駆使して茨の船を造っていた。礼夢達は茨船に乗って、巨大な血管の中を流れていた。どこに向かっているかは彼等もわからなかった。ただ流されるままに翻弄されていた。

「……全く、本当に何でこんなことに……。やっぱり、他人と群れるとロクなことにならないわ。せっかく協力して戦ったって言うのに、その結果がこれ? 冗談にもほどがあるわね」

薔薇に彩られた椅子に腰掛けたレオノーラは心底不満そうに呟いた。
レオノーラにしてみれば、一連の出来事は何の因果もない全く無関係なことだった。気付けば、奇妙な世界に放り込まれ、特に戦う理由もないのに武曽との死闘をやらされ、その結果が今に至っている。文句や苦情ぐらい言ってもいいだろう。

「この川? ……はどこに向かっているのかな?」

巨大な血の流れを見ながら、真は誰に対して言うでもなく呟いた。

「これが血管だとしたら、最終的には心臓に向かうんじゃない? どれくらいで心臓に着くかはわからないけどね。一体どれだけでかいのよ、この悪夢王とやらは」

「眼球一つに学校が丸々一つ納まるくらいですから、某何とか星雲出身の巨大宇宙人より大きいじゃないでしょうか?」

レオノーラが真の呟きに答えたので、彼も口調を敬語に改めて返答した。彼はどこぞの夢幻の民と違って礼儀を弁えていた。
二人は悪夢王メイアーハザードの巨大さを想像し、思わず同時に溜め息を吐いた。

巨大なマンモス校であった霞ヶ原高校の校舎とグラウンド、その広大な面積を有したそれらの建造物でさえ、この巨大な悪夢にとって眼球一つに納まってしまう。本体の大きさはまさに天を貫くほど巨大なモノだろう。下手をすると、日本最高峰の御山にも匹敵するような巨大さかもしれない。

もはや戦えるレベルの存在ではない。天災より厄介な化け物だ。

「あぁ~、もうムカつくわ! そもそも私達に何の関係もないじゃない! 夢幻の民とか悪夢王とか、そんなことは全部! どうしてこんなことになったのよ、もう!」

「その元凶となった武曽は倒せましたが、実乃里を助けられないんじゃ……、元の世界に戻れないんじゃ意味がないですね……」

真とレオノーラはやるせない感情を持て余し、赤い大河を見つめていた。
これだけ巨大な濁流も、悪夢王メイアーハザードにとっては無数にある血管の一つに過ぎない。そう考えると、そんな冗談みたいな存在に抗おうなどという気さえ起きなかった。

今はまだ怒りや不満といった感情で心を昂ぶらせられているが、間もなく絶望の波が全てを呑み込んでしまうだろう。すでに二人の心は闇色の波が打ち寄せていた。

「その武曽のことだが……」

崩落からほとんど無言を通していた礼夢がようやく口を開いた。
真とレオノーラは視線を巨大な血流から礼夢に向けた。

「どうやら生きているようだ。今、小夜子の感情が流れ込んできた」
「……どういうことよ、それは?」

怪訝なというより敵意に満ちたレオノーラの視線が礼夢に突き刺さる。
礼夢の言葉自体を疑問に思ったというより、礼夢の存在自体を疑うような視線。

レオノーラは最初から礼夢に対して不審の目を向けていた。礼夢の存在は明らかに不審であったが、小夜子と音緒は何故かそれを問題としなかった。

霞ヶ原高校の生徒でないのなら、白夜の世界にいるはずがない。夢幻の民でないのなら、白夜の世界まで至れるはずがない。それなのに、真城礼夢という人物は何故か当たり前のように白夜の世界にいた。加えて、礼夢は夢幻の民である音緒と同じくらいに事情に精通していた。今も、何故か武曽が生きていると断じていた。

真城礼夢という存在は一体何なのか。

これまでは小夜子や音緒が彼の味方となって緩衝材となっていたが、今はその彼女達もいなかった。レオノーラの視線は真っ直ぐに礼夢にぶつかっていた。

「俺と小夜子は、精神的にリンクしている。あいつが助けを求めれば、絶対に俺に伝わる。まぁ、伝わったとしても、あいつが自発的に俺を呼ばなければ向こうには行けない。どうやら意識を断たれたみたいだ。クソッ!」

「今一つ貴方の存在がわからないわ。真城礼夢、貴方は一体何者?」
「お前に教えてやる義理はねぇ……と言いたいところだが、説明くらいしてやる。隠す理由もないからな」

礼夢は天を仰ぎ見ながら、肺の中に溜まっていた冷たい空気を一気に吐き出した。

今、彼の脳裏に過ぎっているのは武曽に囚われてしまった小夜子のことだった。真城礼夢にとって、国崎小夜子は命に代えてでも絶対に守らなければいけない存在。

八年前にほんの少し会話を交わしただけの相手に対し、どうしてそこまで思えるのか他人にとっては疑問だろう。絶対におかしいと思うだろう。だが、真城礼夢にとって国崎小夜子は絶対に守れなければならないと運命づけられた少女だった。

そして、それを守れずに今は何も出来ない自分の弱さと愚かさに心底腹が立っていた。だが、それでも礼夢はまだ諦めていなかった。この絶望的な現状を切り抜けて、必ず小夜子の元へ辿り着くと決めていた。

「俺は小夜子を守るために生まれた……。そういう存在だ」

「だから、それが意味不明なのよ。もし、国崎小夜子が覚醒者としての能力で貴方を生み出した、っていうなら話はわかるわ。実際、疑似生命を生み出す能力を持つ者もいたしね。貴方が能力で生まれた奴なら、そういう答えをしても不思議じゃない。
 だけど、貴方は八年前にすでに存在していた。しかも、現実に彼女と出会っている。なら、貴方は覚醒者の能力で生まれた存在でもない現実にいる人間。だとしたら、やっぱりおかしいのよ。貴方という存在は!」

「……だろうな。まぁ、それも含めて一から話してやるよ……。そうだな、まず……」

礼夢がその問いに対する答えを発しようとした瞬間だった。
突如として血の濁流から謎の球体が無数に飛び出してきた。赤い液体を纏っていたが、球体自体は無色のアメーバのようだった。謎の球体は次々と数を増やしていき、次第に周囲を完全に覆い尽くすほどの量になった。

明らかな敵意を感じた。
この謎の球体が一体何なのかは不明だったが、少なくても味方であるとは思えない。礼夢達はすぐにでも迎撃できるように臨戦態勢を取った。

「……全くどうして俺が正体を明かそうとすると、邪魔する奴が出てくるんだ? 別に隠しているつもりもねぇのに」

「何、あれ? 私の邪魔をするなんて何のつもり?」

礼夢とレオノーラは謎の球体達を睨み、八つ当たり気味の怒りを露わにした。

「……ナイトウォーカーって感じじゃないね? ここが血管っていうことは、もしかして白血球とか……?」

真の言葉に答えられる者はいなかったが、その意見は正解だった。
血液の主成分は大きく分けて三種類。酸素を体中に運搬する役割を持つ、赤血球。出血した際に血液を凝固させる役割を持つ、血小板。そして、侵入した細菌やウィルスのような異物に対して攻撃を行う役割を持つ、白血球。

血管の中に侵入してきた礼夢達を異物とみなしたのだろう。視界一面を覆い尽くす膨大な量の白血球は今まさに攻撃態勢に移行していた。

「……仮にあれが白血球だとして、白血球の数ってどれくらいか知っている?」

「いえ、知りませんけど……」
「ふん、あまり知りたいとも思わねぇな」

「普通の人間だと、血液一マイクロリットルに大体三千から一万千個くらいよ。この化け物だと、白血球自体も巨大だけど、数的には同じくらいなのかしらね?」

レオノーラの言葉に返事をする者はいなかった。
仮に人間と同じ数がいるとすれば、それは途方もない数だった。あの白血球にどれほどの強さがあるかは不明だが、問題はやはり数だった。

戦術の基本は数での圧倒、戦略の基本もまた数での圧倒。個人の持つ戦闘力よりも重要であるが、数的な優位は容赦なく人の心を折る。
そして、この夢幻界において心の強さこそが、そのまま実際の力となるのだ。

「……来るぞ!」
「あ、あぁ!」

紅蓮の炎が大河を焼き払い、腐食の霧が空を覆い尽くす。
広範囲に及ぶ二人の能力は白血球の群れを瞬く間に滅ぼしていく。どうやら単体での戦闘力はさして高くないようだった。しかし、あまりに数が膨大であった。かなりの広範囲を薙ぎ払ったのだが、彼等の前にいる白血球の数はまるで減った様子はなかった。

「鬱陶しいことこの上ないわね」

レオノーラも無数の茨槍を形成して、白血球の群れに向けた。

「待ってください、先輩! 先輩はこの船の維持に集中してください。この足場を失ったら僕達は一巻の終わりです。ここは僕と礼夢が何とか……」

「呼び捨てにしてんじゃねぇよ、オカマモヤシ」
「ちょ、今、そんなことを言っている場合じゃ……」

「気安く私に命令しないでくれる? 私、束縛されるのが一番嫌いなの。私は私のやり方で生き残ってみせるわ」

レオノーラは茨鞭で真を引っ叩くと、船首に立って白血球の群れを睨み付けた。

「せ、先輩! 一人で前に出たら……」
「私に触れるな、近付くな!」

二十の茨槍が縦横無尽に伸びていき、次々と白血球を貫いていった。しかし、アメーバ状の白血球は体の中心を抉られても活動を停止しなかった。

茨に貫かれた白血球は、無色から白濁色に変わって凝固していく。それが一つ二つなら大した重さにはならない。百や二百程度であっても、レオノーラの茨を止める力にはならない。しかし、その数が千や万に達すると、もはや無視できない重量となってくる。
そうして、レオノーラが振るう茨は白濁の束縛によって自由を失っていく。

白濁に絡まれた茨はもはやレオノーラの操作を受け付けず、逆に茨と繋がっているレオノーラを赤い大河に引き込もうとしていた。

「くっ……、鬱陶しい! 触れるな触れるな! 私に触れるな!」

レオノーラは纏わりつく白濁物に不快感を露わにし、拒絶の叫びを上げた。

茨に絡まる白濁物を薙ぎ払おうと更に茨を振るうが、それさえも白血球に囚われていく。もがけばもがくほどに沈んでいく底なし沼のように、抵抗すればするほどに束縛は強くなっていった。

「ぅう……、離れなさいよ……」
「先輩ッ!!」

纏わりつく白血球の重みに耐えきれなくなり、レオノーラは赤い大河に引き摺り込まれそうになった。しかし、それを真が寸前のところで後ろから抱き寄せた。

「なっ……!? 私に触れ……」
「ちょっと大人しくしててください!」

レオノーラがなにがしかの苦情を言い掛けるが、真は一喝して黙らせた。
真はレオノーラを抱き寄せ、稲妻の槍を振るって茨を引き千切る。更に、迫ってくる白血球の群れに対して電撃を浴びせて焼き尽くす。

「大丈夫ですか、先輩!」
「わ、わわわ……、私に触れるなァァァッ!!」

茨鞭の真の顔面を痛打した。
殴られた真はレオノーラを手放し、そのまま赤い大河に落ちそうになった。落ちる寸前で礼夢が真の足を掴み、ギリギリのところで引き留めた。

「全く、酷いツンデレだな」

礼夢は真を船の中心辺りに放り投げ、小馬鹿にするようにレオノーラを言った。

「だ、誰がツンデレよ!」
「まぁ、否定するのは構わんが、お前は船の維持に集中してろ。ぶっちゃけ、あいつ等の相手は務まらねぇしな」

「こ、この赤チビストーカーが偉そうに……」
「誰が赤チビストーカーだッ!?」
「ある意味、的を射てるね」

真もレオノーラも詳しい経緯を聞いていないが、礼夢があからさまに小夜子だけを守ろうとしているのは気付いていた。彼はただ小夜子を守るためだけの存在なのだと、説明されるまでもなく察していた。

だから、悪い言い方をすればストーカーというのも外れではない。というより、小夜子以外の人物が事の経緯を聞けば、そういう指摘する可能性は多分にあった。

「お、オカマモヤシ……、てめぇ……」

「ほら、奴等が来るよ、赤チビストーカー」
「さっさと戦いなさいよ、赤チビストーカー」

「てめぇ等、後で覚えてろよ!」

礼夢は仲間達に悪態を吐きながら、迫り来る敵に銃口を向けた。
不貞腐れながらも戦う礼夢に微笑を浮かべ、真も眼前の敵に向けて得物を構えた。
レオノーラは戦う二人を見守りながら、茨船の守りに意識を集中させた。

性格的には最悪の相性の三人だったが、戦いの連携は完璧だった。圧倒的な物量を前にしても攻撃防御共に一歩も引かなかった。前衛の礼夢と真は文句を言い合いながらも、互いに足りない部分を補い合っていた。後衛のレオノーラは茨船の維持と操作に集中して敵の包囲網を見事に潜り抜けていた。

しかし、敵の数はあまりに膨大で十万を優に超える。加えて、いつまで戦えばいいのかも、この戦いの先に救いがあるのかもわからない。

心が折れそうな絶望的な状況。
それでも彼等は互いに背中を預けて戦うしかなかった。彼等にはそれぞれ成し遂げたい想いがあるから。だから、まだ諦める訳にはいかなかった。

そして、その抵抗こそが運命を切り開くための唯一の鍵だった。





To be continued




あとがき

元から活躍の少なかった主人公が
ついに完全に姿を消してしまいましたねww
せっかくイラスト描いてもらったのに、
残念な子ですww
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コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメント羽桜 | URL | 2012-04-13-Fri 01:31 [編集]
続ききたーヾ(@^▽^@)ノ
イラスト大きく載ってて吹きましたwありがとうございます!壁|▽//)ゝ全然状況に沿ってないので・・あわわ!

小夜ちゃんかむばーっくwでも主人公らしい扱いになってきましたね!(遠野さん以外にはですけど!w≧(´▽`)≦アハ)
さてさて礼夢くんの正体は・・?でもここで呼ばれたら残された二人は大変ですね・・(礼夢くんは気にしないでしょうけどもw)
小夜ちゃんも気になりますが、武曽と音緒ちゃんの関係も気になります・・[壁]д=) ジー・・本当に師弟なだけ?(ドキドキ)
遠野さんお忙しいでしょうけども、更新楽しみにしてます~♪
Re: No title
コメント遠野秀一 | URL | 2012-04-14-Sat 09:43 [編集]
羽桜さん、コメントありがとうございます。

吹きましたかwww
大きく載せた甲斐がありましたね。

礼夢の正体とか、その他諸々の話はお話しできませんが……、
あの赤チビストーカーは小夜子のためなら平気で二人を見捨てますね(断言)
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