作家志望の不定期ブログです。
無色の翼、鳥は何処に向かうのか?
スポンサーサイト
-----------  CATEGORY: スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ポンコツ警部と閉ざされた金庫の死体(5)
2011-09-17-Sat  CATEGORY: 閉ざされた金庫の死体
事件編開始です。
今回はまだ多少ギャグがありますが、
事件発覚後はギャグ少なめです。

・ポンコツ警部と閉ざされた金庫の死体(1)
・ポンコツ警部と閉ざされた金庫の死体(2)
・ポンコツ警部と閉ざされた金庫の死体(3)
・ポンコツ警部と閉ざされた金庫の死体(4)
・ポンコツ手帳(閉ざされた金庫の死体)1ページ目
・ポンコツ手帳(閉ざされた金庫の死体)2ページ目
・ポンコツ手帳(閉ざされた金庫の死体)3ページ目
・ポンコツ手帳(閉ざされた金庫の死体)4ページ目
・川蝉庵の碑文



ポンコツ警部と
閉ざされた金庫の死体



『旅人よ、王の背後に潜む二人の従者を見つけ出し、
 愚かな王と従者を八つ裂きにせよ』

密室の中に閉ざされた金庫が開かれる。
密室を開ける者も、金庫を開ける者も、ただ一人しかいない。
だが、その唯一の人物が殺された場所が、密室の中で閉ざされた金庫の中だとしたら一体誰が、その不可能犯罪を実行できるのだろうか。

しかし、市井玖子は毅然と断言する。
殺人が介在している以上、この世界に密室は存在しない、と。
ならば、一体誰がどのように殺したというのか……?
この完全に閉ざされた二重密室の中で……。












「本日は私の誕生日のために遥々御足労ありがとうございました。ささやかな誕生パーティですが、御来賓の方々には今日という日を是非とも楽しんでいってください」

ささやかという解釈を金持ちは理解していない。
目の前の豪華絢爛な立食パーティを見ながら俺はそんなことを思った。
夕刻、荒れ狂う嵐の中で静香の誕生パーティという名目の腹の探り合いが始まった。こうして突っ立って話を聞いている限り、聞こえてくるのは碑文の謎についての情報交換だけだった。

静香の誕生日を祝う声はほとんど聞こえない。パーティの最初の方に申し訳ない程度に静香に祝いの言葉を掛け、あとはずっと碑文の話だ。

周囲に耳を傾ける限り、俺とポンコツ以外に碑文の謎を解けた者はいなさそうだった。

ちなみに静香もまだ碑文の謎を解けていなかった。
ポンコツ曰く、自分で解かなければ意味はない、とのこと。俺もその意見自体には賛成なので、とりあえず静香のことはポンコツに任せることにした。ひとまず過程はどうあれ、最終的には何とかしてくれるはずだ。振り回されるのが俺ではないので気が楽だった。

「先輩先輩! どうですか、私のドレス姿は!」
「あぁ、このチキン美味ぇな」

「私のドレス姿を差し置いてニワトリの太ももに夢中ですか! 太ももが好きなら私のを見ればいいんです! ほら、見てください見てください! そして、小一時間ほど褒め称えてください!」

「やかましい!」

一発ポンコツを殴ってやろうかと思ったが、今はさすがに止めておく。いかにポンコツとはいえ、ドレスを着てめかしこんでいる時に殴るのはちょっとアレだ……。アレだ……。決して可哀想とかではない。基本、こいつの自業自得だし……。

「っていうか、チラッとくらい見てください。さすがに全然見てもらえないと私でも凹みます……」

「うっ……」

本当に珍しくしおらしい声を出しやがったので、少しだけ動揺してしまう。普段はいくら殴っても足りないくらいムカつく奴なので、こういう声を出されるとどうして扱っていいのかわからなくなる。
俺は仕方なくチキンをくわえたまま、眉間にしわを寄せた表情でドレス姿のポンコツのことを見る。

……。
…………。
………………。

まぁ、馬子に衣装という奴だな。淡い青色のイブニングドレスが上等だから、相乗効果でポンコツもまともに見えるだけだ。希少価値の高そうな宝石なんて付けているから、目の錯覚が起きるだけで……。

「猪井君、顔赤くない?」
「酒が回っているだけだ。少し黙ってろ、睦美」

真紅の薔薇飾りがあるドレスを身に纏ったポンコツ二号機、もとい新開睦美は俺の顔を見るなりニヤニヤとムカつく笑顔を浮かべていた。

「ふふふ、純情チェリーみたいな反応しちゃって可愛いわね~」
「誰がチェリーか。去年まで彼女いたぞ、俺は」

そういえば、あの女は今頃どうしているかね?
まぁ、刑事以外の奴と幸せにやっているといいね。

「…………それ、どんな妄想ですか?」

ポンコツが目の色を変えて(刑事モード)、真顔で聞いてきやがった。

「てめぇ……、その反応は俺に喧嘩売ってんのか? あァ?」
「喧嘩売ってるのは先輩の方です! 去年って私が刑事課配属されてから結構経ってるじゃないですか! その期間に彼女いたんですか! ショックです! 私という者がありながら!」

「やかましい。俺が昔どこで誰と付き合っていようと、お前に関係ないだろう」

「先輩の馬鹿ァァァッ!!」
「痛ェェェッ!!」

向こう脛をヒールで思い切り蹴られた。

「先輩がこんな浮気者だったなんて知りませんでした! もう相手してあげません! バーカ、バーカ! 先輩の変態! もげろ!」

もげろって何がだよッ!?
ポンコツは色々と不穏当な発言を吐き捨てると、憤慨したままどこかへ行ってしまった。

「今のは猪井君が悪いなぁ」

睦美はニヤニヤと面白い物でも観覧したような表情をしていた。非常に不愉快極まりない顔だ。

「ちっ……、うるせぇよ。大体、話振ったのはてめぇじゃねぇか」

「私のせいにしないでほしいなぁ」
「はいはい、俺が悪かったんだろう。クソ……」
「拗ねない拗ねない」

居酒屋で絡んでくる酔っ払いみたいに気安く俺の背中をポンポンと叩く睦美。鬱陶しいので、その手を叩き落とし、近くのテーブルに並べられた生ハムメロンを頬張った。

「そういえば、猪井君はこの島にいる人達のこと、ほとんど知らないよね? 簡単に紹介してあげる」

「んっ……、もぐもぐ……、頼む」

「あそこベヒシュタインのピアノの近くにいるグループが、前当主の次男であり、当主代行の藤堂銀司一家よ。実質的に藤堂家の財産を管理している人物で、いわゆる投資家ね。ただ、最近取引でトラぶって、金策で苦労しているらしいわ。
 奥さんの名前は敦子、息子さんの名前は大角。……まぁ、全体的にふくよか系よね?」

睦美の最後の発言にはノーコメント……にしておきたいが、語り手として説明しなければならない。ハッキリ言って、次男一家はぶっちゃけメタボ気味だ。
銀司は巨漢と呼べるほどではないが、普通に中年太りしたオッサンだった。敦子も大角も揃って、少々ふっくらした感じだ。よく言えば、温厚そうな感じだ。胡散臭い金持ち一家というより、どこにでもいそうなサラリーマン一家に見える。

「で、あの次男一家の正反対側にいる眼鏡集団が三男の桂馬一家」
「……三男?」

「そう。前当主の玉三郎には三人の息子がいたの。長男金助、次男銀司、三男桂馬。でも、長男の金助は夫婦共に八年前に亡くなっていて、本来なら彼の娘である静香が次期当主になるはずだったんだけど、静香自身がそれを固辞して、次男の銀司に譲ったのよ」

「結構面倒臭いことになってるんだな」

「まぁ、金助夫妻が亡くなった時、静香はまだ学生だったからね。次期当主とか言われても困る年代よね。という訳で、静香は次期当主の座を銀司に譲ったって訳。ただ、銀司としては後ろめたいところがあるらしくて、何かと静香を敬遠しているらしいわ」

まぁ、気持ちはわかる。
正式に譲渡された物であっても、それがあまりに大き過ぎるために、いつ返してくれと言われるのか脅えているのだろう。本来自分の物ではない藤堂家当主の座、それをいつ奪われるのか不安を抱えているのかもしれない。
……もし、静香が殺されるようなことがあったら、真っ先に銀司を疑いたくなるな。って、さすがに不謹慎な考えか。事件なんて起こらないに限る。

「ちょっと話がズレたわね。桂馬の奥さんの名前は夕実、娘さんの名前は飛鳥。次男一家と三男一家は見分けやすいわね」

「……そういうことを言うな。失礼だろ」

だが、事実なので否定は出来ない。
桂馬夫妻はどちらも眼鏡を駆けていて、何となく神経質そうな雰囲気があった。娘の飛鳥も学校で委員長を務めてそうな真面目そうな顔立ちをしていた。
三男一家は、ふくよかな次男一家と比べると、少し近寄りがたい雰囲気があった。

「あぁ、ちなみに桂馬は貿易関係の会社社長だそうよ。まぁ、今は経営が傾いて早く遺産を欲しがっているみたいだけどね」

「金持ちってのも存外、金に困っているもんだな」

銀司と桂馬、どちらも自身の経済状態から多額の金を欲している。だとするなら、あの川蝉庵の碑文はさぞかし邪魔だろう。あの碑文が解けるまで遺産分配をしないなんて厄介な遺言を残した父をさぞ恨んでいるだろう。

「そうね。だから、碑文の謎解きに協力してくれる助っ人を呼んでいるのよ。ほら、あっちの調度品の所で盛り上がって、インテリっぽいオッサン三人組がいるでしょ?
 太っている順に……藤堂家顧問弁護士の冠一郎。銀司の友人で開業医の安福友晴。桂馬の大学時代の恩師で、海外文学専攻の大学教授の川端友平。安福と川端は、私達みたいに川蝉庵の碑文を解くために呼ばれた客人ね。冠弁護士は前当主の遺言書を預かっている人物だけど」

太っている順……って、まぁビジュアル的にわかりやすいが……。
柔道部時代の経験を元にして体重を目測すると、冠は百二十少々、安福は百前後、川端は九十ちょっとといったところか。ちなみにふっくらしていると言った銀司はおよそ八十後半ってところだろう。

「遺言書の件は、顧問弁護士の冠と使用人頭の大蔵が管理しているの。二人とも前当主の側近中の側近で、銀司でも遺言書の件は覆せないそうよ。早く金が欲しいのに、大変ね」

全く他人事のように笑い飛ばす睦美。そんな彼女の笑顔を見て、俺は小さく溜め息を吐いた。

「だとすると最悪、五年は遺産分配が出来ない訳だ」
「五年? そんな法律あるの?」

「あぁ、遺言によって遺産分割の方法を定めることは出来るが、その期間は決められているんだ。それが確か、五年だったはずだ」

「まぁ、五年も我慢できるくらいなら、次男一家も三男一家もあんなに必死に謎解きしようなんて思わないわよね~。どっちの経済状況も逼迫して、なりふり構わずってところがあるからね。あまり彼等には近付かない方がいいわよ」

言われなくても、あんなピリピリしている連中にちょっかいを出す気などない。
このパーティ会場の雰囲気はいつ何かが起こっても不思議ではないほど火薬臭い。一触即発とまでは言わないが、疑惑と敵意が満ち満ちていた。嵐の孤島というシチュエーションも相成って、本当に何かしらの事件が起こりそうな気配がした。
出来ることなら、何も起こらずに嵐が去ってくれることを祈る。


「ドーン!!」
「ぐぉ!? ポンコツめ、何しやがる!!」


背後からいきなり体当たりを受け、振り返ってみると案の定、ポンコツが不機嫌そうな顔で俺を睨んでいた。ポンコツの隣には、エメラルドグリーンのドレスを纏った静香も一緒にいた。

「いつまでお姉ちゃんと話している気ですか! お姉ちゃんは人妻ですよ! まさか人妻がいいんですか! 有閑マダムに熱いパトス感じる人種なんですか! いけませんよ、先輩! 最近、お姉ちゃんは小じわが増えたって……」

「キューコぉぉぉ……!?」
「みゃああああ!! 耳引っ張らないでください!! 痛い痛い!! 捻っちゃ駄目です!! お姉ちゃん、妹苛めはよくないです!!」

俺が殴る前に、こめかみに青筋を立てた睦美に制裁されるポンコツ。
睦美はお世辞抜きでも十代に見えるくらい若そうに見えるのだが、すでに三十路を越えている。色々と気になるところがあるのだろう。まぁ、さすがに口に出して言うことではない。その程度のデリカシーくらいはわきまえている。
姉に折檻されているポンコツのことは放っておいて、ポンコツと一緒に来た静香と話すことにした。

「よぉ、主役。誕生日おめでとう」
「あははは……。ありがとうございます」

「話には聞いていたが、凄い雰囲気だな?」

「えぇ、銀司叔父様もお祖父様の言い付けで私の面倒を見てくれてますが、嫌々感が滲み出てるので、正直あまりお世話になりたくないんですよね。だけど、大蔵さんや冠さんがいる間は、私も銀司叔父様も遺言を無視することは出来ませんから……」

「大変だな、お前も……」

静香は苦笑いをする。
同情はしないが、金持ちも金持ちなりに苦労しているらしい。
そうして俺が静香と話していると、またポンコツが邪魔をしてきて騒がしくなった。せっかくのドレス姿なので殴るのは自重してやったが、おかげで調子乗って五月蠅かった。

いつもの調子で盛り上がっていると時間は瞬く間に過ぎ去っていった。そして、静香の誕生日パーティは始まりと同じように主役の挨拶によって終了を告げられた。
解散になると、各々足早に去っていった。藤堂家の家督と全財産を狙う者達は、碑文の謎について熱い議論を夜遅くまで繰り広げるのだろう。全くご苦労なことだ。

だが、今のところ碑文の謎を解けた者は俺とポンコツ以外にいない。ポンコツの施したロクでもない悪戯のおかげで、そう断言できるだけの確証が得られた。

もし、謎を解けた者がいるならば、あのパーティ会場のある変化を気付いていなければいけない。俺もポンコツの悪戯に気付いたが、敢えてそのことは一切無視した。
まぁ、碑文の謎についてはひとまず置いておこう。
どの道、謎が解けたとしても今は台風直撃中だから何も出来ないんだから……。

俺は少々酒を飲み足りなかったので、部屋に帰る前に使用人に酒を注文した。しかし、そこで冠弁護士に声を掛けられ、使用人室で一杯やることになった。
冠弁護士も俺と同じように、あの剣呑な雰囲気の中では食が進まなかったらしい。まぁ、メタボな彼の場合、多少食が進まない程度がちょうどいいのではないかと思うが、そこは口出しせずに夜遅くまで晩酌に付き合った。三河重吾という料理人が美味いつまみを作ってくれて、しかも別嬪メイド(牧野清美と大蔵礼子という名前らしい)が二人も高級酒をどんどんと酌をしてくれたので、少々飲み過ぎることになった。

ポンコツ達は女達だけで呑むと言ったので、パーティ終了時に別れた。今頃、ポンコツと睦美と静香の三人で盛り上がっているのだろう。

そうして夜が更けていった。










翌日早朝。
惨劇の始まりは、食堂に置かれていた。
それに最初に気付いてしまった哀れなメイド、牧野清美の悲鳴によって惨劇の存在は俺達の目の前に姿を現した。

着替え途中だった俺は悲鳴を聞き付け、慌てて客室から飛び出した。それとほぼ同時にポンコツと睦美も隣の客室から姿を見せた。ポンコツと視線を交わせると、付いてこいと目で指示をする。今の彼女はすでに刑事モードに切り替わっていた。

この市井玖子は、普段こそ喧しくて壊れたラジオよりもポンコツだが、いざ事件が起こるとどんな何事件でも絶対に解決す名刑事に変わる。通称、刑事モードと呼んでいるが、この間のポンコツもとい市井警部には絶対の信頼が置ける。

薄い色彩の瞳に、絶対の意志を宿した彼女の後ろを付いていく。
この時点で俺は悲鳴が誰のもので、どこから聞こえたのかわからなかった。しかし、市井警部は悲鳴が聞こえた時点でそれがどこから発生されたか見当を付けていた。

そこが二階食堂、飛車の間だった。

飛車の間の扉は開け放たれたままで、そこに牧野の悲鳴を聞き付けた使用人達が集まっていた。飛車の間に入り、すぐに異常は見つけられなかった。見た目に大きな変化はない。だが、腰を抜かして座り込んでいる牧野の指差す先、それを追ってようやくその存在に気付く。

……それは、指だった。

人間の指だけが長テーブルの中央に置かれていた。
指の主である人間の姿は、この室内のどこにも見当たらなかった。

その時になって、俺もようやく刑事としての意識に切り替わる。まさか自分で切り落としたという笑えない冗談でない限り、あれは傷害の証拠だ。……いや、指を切断して終わるはずがない。こうして切断した指を食堂の真ん中に置く意味は何か、考えるまでもないだろう。

これは……、殺人事件の始まりを告げる号砲だ……。

人間の指を切断し、それを見せびらかすように食堂の真ん中に置くような残虐野郎が、指の主に何もしないはずがない。そもそも生きたまま人間の指を切り落とす方が大変だ。殺して動かなくなってから、ゆっくりと切断する方が楽に決まっている。

俺と市井警部は、テーブルの上に置かれている指の元まで向かった。
すると、そこには被害者の血らしき物で、こう書かれていた。

『旅人よ、王の背後に潜む二人の従者を見つけ出し、
 愚かな王と従者を八つ裂きにせよ』









あとがき

まぁ、今回は猪井君が悪いなーww
普段は大抵ポンコツ警部が騒いで自業自得なところはあるけど、
今回の猪井君は駄目だなー。蹴られて当然ですねw

あと、碑文の回答ですが、
事件編にチラチラとヒント入れてます。
是非とも推理が聞きたいです。

是非とも!
関連記事
スポンサーサイト
トラックバック0 コメント0
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
TB*URL
<< 2017/11 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -


Copyright © 2017 無色の翼、鳥は何処に向かうのか?. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。