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ヘブンズ・ゲート ~精神の終焉~ [最終話]
2011-07-21-Thu  CATEGORY: 小説:ヘブンズ・ゲート
ヘブンズ・ゲート最終話です。
そこまで長くする予定もなかったので、
特にプロットも立ててなかったんですが、
思ったより長くなりましたね。

ピカレスクとか麻薬とか
初めて題材にする物だったので、
色々と思ったように書けない部分もありましたが、
ひとまずヘブンズ・ゲートは終結です。

ヘブンズ・ゲートの裏側で行なわれていた
ゲームの話は、後日更新予定の「White Wind Wraith」で
描きたいと思います。

・[第0話]
・[第1話]
・[第2話]
・[第3話]
・[第4話]
・[第5話]
・[第6話]
・[第7話]
・[第8話]



ヘブンズ・ゲート ~精神の終焉~


「東雲正義は死んだか……」

嘲笑の風がバベル・タワーの屋上に愉快そうに吹き荒れた。
超高層ビルの屋上には、まるでアフタヌーンティーを楽しむようにラウンジテーブルが置かれていた。それは正直異様な光景だった。本来はヘリポートしかない広大なスペースの中心に、ただポツンと置かれたラウンジテーブル。

そして、地獄の中心たるバベル・タワーの頂で優雅にティータイムを楽しんでいるのは、世界中の悪意を一人の人間という器に凝縮した存在、黒の王だった。

黒の王はチェス盤の中で孤立したポーンを摘み、遥か地上に向けて放り捨てた。風城市随一の超高層ビル、バベル・タワー屋上から放り捨てられた駒は長い長い時間を掛けて地上に堕ちていき、跡形もないくらいに粉々に砕け散った。

災禍の風を支配する魔王は、地獄の業火に焼かれている地上を見つめて心の底から愉快そうに微笑んだ。それは東雲正義のような自暴自棄な破壊衝動から来る嘲笑ではなく、遊戯を楽しむ子供のように嘘偽りなく愉快という感情から来る哄笑だった。

「つまらん最期だったな。己が分際に余りある罪を自覚し、後悔と絶望のままに朽ち果てれば愉快に笑えたというのに、凪桜のせいで台無しになったな。罪人の最期は惨めで醜くあるべきだ。伊崎誠のように無様に散ればよかったのだよ、東雲正義」

今は亡き駒に向けて語り掛ける黒の王。
悪逆の王にとって、東雲正義の死に方はとてもつまらない物だった。凪桜が彼の罪を糾弾して、苦悩と絶望のまま最期を遂げてほしかった。だが、結果はあんな陳腐で静かな終わり方だった。

「東雲正義、貴様の死に様は悪の最期にあるまじき醜態だ。所詮、貴様の悪としての器などその程度だったのか。失望したよ。あぁ、本当に心の底から失望した。人は何故、生まれながらに悪として生まれてこないのか? 東雲正義、君は悪ではなかった。悪になりきれない中途半端なクズだったよ」

王は深い溜め息を吐き漏らし、業火に照らされた夜空を見上げた。
あの天上に浮かぶ穢れなき満月を血染めに蹂躙することが出来れば、どれだけ愉快だろうか。黒の王は月を掴むように空に手を掲げる。

そして、届かぬ月の代わりに盤上の白のルークに迫っていた黒のナイトを毟り取るように掴んだ。

「……東雲が死に、黒澤も死んだ」

黒のナイトを先程のように地上に投げ捨て、次に黒のビショップを手に取り、自陣深くに戻した。

「岸辺もしばらく使えない。中央を圧倒的に支配しているが、駒を派手に失い過ぎたか。駒の判断で勝手に行動させるのは見ていて愉快であるが、このゲームにおいては不利益な面も多いな。特に黒澤を失ったことは痛手だ。恐るべき駒だな、貴様は……?」

悪逆の王は愉快そうに笑いながら、白のルークを手に取った。
チェスにおいてキングを仕留めるのに最低限必要な駒はルークだった。ナイトやビショップでは一駒でキングを詰めることは絶対に出来ないのだ。例え、全ての駒を討ち滅ぼしてもキングとルークが残っていれば、逆転の目は残ってしまう。

「佐渡逸樹、俺を殺すのは貴様か?」

黒き悪魔の王は、自らの運命を示した盤上へ白き駒を叩き付けた。
多くの駒が失われた結果、ルークの眼前には遮る者は失せた。次の手順で迷わず黒の王の懐深くに突っ込んでくるだろう。

単騎にて王を殺し得る駒。そんな駒の存在を悪逆の王は心待ちにしていた。

「……それとも、もう一つの可能性か?」

邪悪な王は盤上でもっとも脆弱な駒を見下しながら、満面の悪意を込めて微笑んだ。

チェスにおいて最弱の駒こそが、チェスの魂と呼ばれている。
誰よりも弱く、だがそれでも前に進むことしか出来ない駒。

最弱にして愚直。

愛するべき愚か者だが、それ故に王を殺し得る可能性を秘めている。いつの時代でも王の統治を覆すのは、虐げられるような最下層に押し込められた民衆の怒り。もっとも弱き者の意志によって、絶対たる王の牙城を打ち砕く。



「くくく……、はっはははははははははははは!!
 早く……、早く来い! この俺を殺し得る駒達よ! 殺し合おう! 早く殺し合おうじゃないか! 正義などと理解できない意志を振るう者達よ! でなければ、もっともっと殺すぞ! 罪のない人間達をゴミ屑のように踏み躙って遊ぶぞ? あっはははははははははは!!
 あぁ、楽しい! 楽しいな! 悪が悪として悪らしく生きることは、こんなにも楽しい! 何故、人間は正義であろうとするのだ? 何故、どれだけ罪を犯しても自分が正しい者でありたいと願う? なぁ、教えてくれよ、東雲正義! 貴様はどうして最期まで悪で在り続けなかった? 地獄の釜で溺れながら、今貴様は何を想っている? 後悔か? 後悔なのか? 悪であったことに対する後悔か? だとしたら、実に愚かだ! 貴様は悪であったことを誇るべきだった!!
 楽しかっただろう? 楽しかっただろう、東雲正義? 無力な人間を暴力で踏み躙ることは楽しかっただろう? 愚かな人間を騙して全てを奪ってやることは楽しかったのかだろう? 女とは凌辱して汚辱して隷属してやるものだろう? 男とは蹂躙して冒涜して屈服してやるものだろう? そんな当たり前のことに何故、罪悪感など抱くというのだ?
 人間よ、悪であれ! 純粋な悪であれ! 己が欲望のままに生きる悪であれ! 俺がこの善意に満ちた腐った世界を蹂躙し、悪徳が支配する醜き世界を創り上げてやろう!! さぁ、踊れ踊れ!! 地獄の業火に焼かれて踊り死ね!! さぁ、この美しき世界を犯してやろう!!」


魔王は嗤う。
心の底から邪悪に嗤う。
どこまで純粋な悪として全てを見下して嗤う。

夜闇より深き悪意を湛えた邪悪なる魔王の名は、風間静夜。
生まれながらにして悪として完成された王。この世に存在し得る悪意を凝縮して人間の器に注ぎ込んで熟成させた真性の悪。全ての悪逆と破滅を司る者を統治するために降誕した支配者。

全ては、この少年の手によって起こされた悲劇。
東雲正義をゲームに招き入れた揺るぎなき悪の王者。

この比類なき悪の王を殺す者は現れるのだろうか。ゲームの勝敗は、ここではない別の物語で語られる。






Good-bye, a Sinful Piece




あとがき

↑の方でもチョロッと言いましたが、
思ったように書けなかった部分がたくさんありました、この作品。
麻薬ピカレスクの習作として書いてみたんですが、
色々と試行錯誤が出来て、いい練習になりました。

一つ前の後書きで
元々凪先生が東雲さんを殺す予定だったって
書いたことからも察せられたかもしれませんが、
実はもっとドロドロした話にしたかったんですよ。

ただアレだ、東雲さんがイケメンになり過ぎてたw
悪役はもっと醜くあるべきですね。

書きたかったモノとは少し方向性はズレましたが、
これはこれでよかった気もします。
イイ経験でした。



あと、静夜様の初登場ですね。
この方がヘブンズ・ゲートの続編「White Wind Wraith」の
主人公になります。

この方、書いてて実に楽しいw
でも、台詞が長くて実にめんどいw

White Wind Wraithでは
静夜様が大活躍してくれるはずです。
シリアスでもギャグでもww

White Wind Wraithの長さは未定ですが、
BLACK FANGと同じくらいか、それ以上になるかと思います。
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コメント

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No title
コメントまどるD | URL | 2011-07-21-Thu 22:24 [編集]
執筆お疲れさまでした。そしてまだ書いているという事に驚きw 執筆力に頭が下がるばかりです。
 街が焼かれちゃいましたが、この続きは次の作品で描かれるんでしょうか? にしても、街が焼かれるなんて、防衛省とかが動き出しそうな展開ですねw 

 東雲の死に方は人間らしい死に方だと思いました。なにより、最後に救われたんじゃないかと。一人寂しく死ぬよりも、彼の死は最後の最後で安らぎを得られた。病に冒され、麻薬に走り、堕落の道に走るも人間とは不思議なもので根本からは変われない。だからこそ、彼は凪桜と最後に出会う事で、自分を振り返り、本当の自分から逃げてきた軌跡を見つめなおし、本来の自分の気持ちを彼女に吐きだし、逝く。
 哀しい終わり方だと思いますが、やっぱり救われたなぁ、と。

にしても、真由美は大丈夫か? ・・・・・・逸樹はもう人間じゃないから大丈夫だと(ry
Re: No title
コメント遠野秀一 | URL | 2011-07-22-Fri 01:00 [編集]
まどるDさん、コメントありがとうございます。

お祝いコメントどうもです<(_ _)>
ヘブゲは色々上手く行かない部分はありましたが、
ひとまず綺麗に終われたかな~?と思ってます。

真由美は……実はどうするか未定だったりしますw
というか、どっちのパターンも考えているのってが正しいですねw
真由美がどうなるかは、続編にて明らかになります。
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