作家志望の不定期ブログです。
無色の翼、鳥は何処に向かうのか?
スポンサーサイト
-----------  CATEGORY: スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
大きな樹の下で 第九話「オムライス」
2010-07-31-Sat  CATEGORY: 小説:大きな樹の下で
作中でチョロッと出てくるオムライス、
私も作ろうかなーと考えているモノです。

気が向いたら別記事で書くかもしれません。
そしたら、こっちにもリンク貼ったりするかも……。
まぁ、忘れなかったらの話ですが……。

・第一話「はじまりのはじまり」
・第二話「大きな樹」
・第三話「ワンコの気持ち」
・第四話「タマヒメ」
・第五話「一年八組の愉快な仲間達」
・第六話「君の旋律を聞きたい」
・第七話「はじめてのライバル」
・第八話「着ぐるみ理論」



大きな樹の下で
第九話「オムライス」


私が目を離した隙に、このウドの大木は……。
本人は全くモテないつもりのようだが、あれで大樹は結構モテやがる。顔立ちは悪くない方だし、優しくて気遣いも出来て、他のボンクラ連中とは全然違う。

これまでは私が徹底してガードしてきたけど、別のクラスになった今ではそれも難しかった。

しかし、一番頭が痛くなる問題は珠樹のことだ。

あれは今までで最強のライバルだ……。

大樹と珠樹は雰囲気が似ているというか、波長が全く同じなのだ。纏っている雰囲気とか、根本的な性格などが凄く似通っている。だからこそ、二人の距離は自然と近くなってしまう。

どっちも天然だからまだ恋愛対象として見ている感じではないけど、もし片方にスイッチが入ってしまったら最悪だ。

そして、一番厄介なのは、私自身が珠樹を嫌いになれないことだ。

大樹と雰囲気が似ていることも相まって、珠樹の側にいるのは心地よかった。いっそ敵として嫌いになれれば、追っ払うのも楽だったのに。

あっ、それと胡桃も要注意だ。
奴に対しては容赦なく噛み付けるが、返り討ちに遭う可能性が高かった。全く……、高校初日でいきなり厄介なのが二人も現れたな。


「小豆、今日は何食べたい」
「何でもいい」

「それが一番困るんだけどな……」



今私達はスーパーの青果コーナーにいた。
学校の帰りに食料の調達に来ているのだ。といっても、野菜選びをしているのも、ショッピングカートを押しているのも大樹だ。
私はただ隣で突っ立っているだけ。何か文句あるか?

「キャベツが高い……。最近の野菜高騰はどうにかならないのかな」

大樹は値段が高騰しているキャベツを手に取ったが、結局カゴに入れず、代わりにもやし三袋放り込んだ。

「……安いからって、もやしばっかりは嫌だぞ」
「いいじゃないか、麻婆もやし、美味しいし」

「飽きたんだよ、もやし!」

「……じゃあ、これからキャベツとか高騰した野菜を買うけど、そのせいで今月分の食費が増えて、その分だけ小豆のお小遣いが減っていくけど、それでいいんだね?」

「もやし最高!!」

キャベツに伸びる大樹の手を叩き落とし、私は高らかに宣言した。
私の両親は仕送りを娘である私ではなく大樹に送りつけていた。確かに家事を一手に仕切っているのは大樹だし、理屈がわからない訳ではないが、微妙に納得がいかなかった。

……まぁ、前に衝動買いで仕送りを全部使い切ったことが何度かあるが、それくらい大目に見てもいいと思う。


「ついでに牛乳も安いのにしたいんだけどね……」
「それは出来ない!!」

「……毎日五百円の出費がなければ、もっとお小遣い出来るんだけど」

「そんなの関係ない!! 良質な牛乳を摂取することは全てにおいて優先されるんだよ!!」


私には絶対的に必要なのだ、良質な牛乳が。大樹みたいに無駄にでかい奴には、私の気持ちがわからないのだ。


「はいはい……(どうせ減るのは小豆の小遣いだけだし)」


今、何か非常に腹立たしいことを考えなかったか、このウドの大木。
……まぁ、いっか。今重要なのは、牛乳の質をいかにして守り通すかということだけだ。後は瑣末な問題だ。

「ホワイトソースは買った方が経済的かな……。あの牛乳を使うのは、勿体ないし……」

っていうか、私の牛乳を勝手に飲んだり使ったりしたら殺すぞ。

「うん。よし、今日はホワイトソース仕立てのオムライスにしよう」
「えぇ~!? オムライスはケチャップだろ、この野郎!」

「文句があるな、自分で作りなよ」

この野郎、私が料理できないことを知っているくせに酷いことを言う。

「一度やってみたかったんだよね。ほら、お店とかにある感じの奴」
「そんなの、店に食いに行けばいいだろう! 私はケチャップたっぷりのオムライスがいい!」

「さっきは何でもいいって言ってたじゃないか……」

「うっさい! オムライスはケチャップで食べてこそオムライスなんだよ! あと、もちろんキャベツの千切り山盛りも必須だ! ホワイトソースなんて気取ったものはオムライスなんて認めない!」

「この間、ドミグラスソースのオムライス食べたいって駄々こねたのは誰だよ?」

そんなの記憶にない!
……ということにしておこう。
二週間前、二人きりで食べに行った洋食屋のオムライスは絶品だった。フワフワ半熟の卵のオムライスに、濃厚なドミグラスソースが掛けられていて、味も見た目も文句の付けようがなかった。

……何より、久し振りに大樹と二人きりで外食できたことが嬉しかった。ほら、何だかデートみたい雰囲気で……。

「まぁ、いいや。キノコキノコ……。シメジ、舞茸、エノキ、エリンギ~、と」

「それ全部ホワイトソースに入れるのか?」
「んっ? 別に入れてもいいけど、半分以上は買いだめだよ? 個人的にエリンギはベーコン巻にする方が好きだし」

あぁ、あれは美味いな。
二十歳になったらビールと一緒に食いたい。
……もちろん、まだビールなんて飲んだことはないからな?


「そういえば、小豆。新しいクラスはどうだった?」


大樹は大量のキノコをショッピングカートに放り込みながら、保護者のお約束的な台詞を言った。

保護者気取りの大樹に若干怒りが湧くが、今更何を言ったところで聞くような奴ではなかった。大樹はぼけーっとしているようで結構頑固なのだ。特に一度決めたことは絶対に曲げなかった。

何度も言い争いしたことに反発しても仕方がなかったので、私は今日クラスで起きた出来事を思い返しながら口を開いた。


「まぁ、退屈はしなさそうだな。いきなり猫とネズミの戦いになってたことには驚いたけど」

「猫? ……あぁ、胡桃のことか。じゃあ、ネズミってのは?」
「んん? あ~、胡桃に喧嘩を売ってたチビ男」

「女の子に手を上げようとするなんて最低な奴だな……」

「そうだそうだ! 顔に油性マジックで落書きして、某ネズミマスコットのカチューシャを接着剤で付けたくらい、笑って許してやれってんだよ!」

「…………」

大樹は深い溜め息を一つ吐きながら、鶏肉をショッピングカートに放り込んだ。何か言いたそうな表情をしていたが、何も言わなかったのだから大した話ではないのだろう。

「あと、担任がおっかない。顔が完全にライオン。あれ、絶対前世はライオンだったよ。髭がまるでタテガミみたいでね。叫ぶと、獣の雄叫びに聞こえるんだぜ。あれは危険だね。全く厄介なのが担任になっちまったな~」

「小豆と胡桃にはちょうどいいよ」
「まるで私達が手のつけられない問題児みたいに言うな!」

「あははは♪」

大樹は私の言い分を無視して、レジの方へ行ってしまった。
私は悔しげに地団駄を踏み、スーパーの外に出て大樹が出てくるのを待つことにした。

袋に詰めるくらい手伝え? 誰がやるか、そんな面倒なこと。










私は今、大樹の家に住んでいた。同棲と言われればそうかもしれないが、実際はそんな甘ったるいものではなかった。

私と大樹の両親はどちらも共働きで、しかも出張が多かった。そのため小学生の頃からどちらかの家に預けられる生活が当たり前だった。今更大樹と同じ屋根の下で過ごしているからと言って、別にドキドキしたりはしなかった。

……まぁ、思春期に入ったばかりの頃はいろいろ思うところがあったんだけど、慣れた生活は変えられなかった。

という訳で大樹と一緒に買い物を終えた私は、リビングのソファに寝転びながら、先日借りた映画のDVDを見ていた。

ちなみに大樹はキッチンで夕食準備中だ。

「手伝わないの?」なんてつまらない愚問をする奴には、真空飛び膝蹴りを食らわせてやる。キッチンの安全を守るためには、私があの危険地帯に近付かない方がいいのだ。

今までに何度か大樹と一緒にキッチンに立つという幻想を抱いたこともあった。しかし、人間には得手不得手があるのだ。私に料理なんて無理難題をやらせるのが間違いだった。

以前、料理の手伝いをしていた私の手からすっぽ抜けた包丁が大樹の頬を掠めた時、もう二度とキッチンには立つまいと誓った。


「大樹~、今日の飯は~?」
「オムライス~」


……あぁ、さっき言ってたホワイトソース仕立ての奴か。
正直、オムライスにはケチャップしかないと思う。しかし、文句を言える立場ではないので、不満げに頬を膨らますことしか出来なかった。

「むぅ……」

トントンとリズミカルな包丁の音が聞こえた。キノコでも切っているのだろうか。それにしては、少し音が早い気がする。
まぁ、何を切っているかなんて、ソファに寝転んでいる私に見えるはずがなかった。

「またむくれてるの、小豆?」
「別にむくれてねぇよ! ホワイトソースだろうと、ドミグラスソースだろうと好きにすればいいだろ!」

「はいはい。じゃあ、好きにするね」

ジュウウウ……と香ばしいチキンライスを炒める音が聞こえると、否応なく食欲そそられて、お腹の虫が抗議を始めた。今からキッチンに突入して、チキンライスだけでも強奪してこい、とお腹の虫は主張していた。

しかし、保護者モードになっている大樹に喧嘩を売るような真似が出来るはずもなかった。お説教+お小遣いカットの地獄コンボを食らうことになるし、そもそも本気で怒る大樹を勝てるはずがないのだ。

「はぁ~……」

ソファに寝転んだまま足をバタバタさせ、重い溜め息を吐いた。

結局、私が何を言ったところで大樹は歯牙に掛けないのだ。子供のワガママを適当に流す親みたいな感じに近かった。
もっとしっかりすればいいのかなと思うのだが、私がしっかりしたら大樹が離れていってしまいそうで怖かった。

そんなことを考えると、カチャカチャと卵を掻き混ぜる音が聞こえた。卵を作る段階ということは完成まであと少しだろう。


「ねぇ、大樹?」
「んん~?」

「新しいクラスはどう?」

「そうだね……。まぁ、中学からの友達とかもいるし、新しい友達も出来たし、上手くやっていけそうだよ」


新しい友達というのは言うまでもなく、珠樹のことだ。
確かにあの子がいれば、新しいクラスも楽しいだろうよ。あぁ~、ムカつく……。


「でも、小豆がいないのは寂しいよ」
「えっ……?」

「今までずっと一緒だったからね。隣に君がいないのは寂しいよ。まぁ、問題起こさないか心配ってのもあるけど、やっぱり寂しいって気持ちが一番大きいかな。うん、小豆がいない日常なんて嫌だよ。これからもずっと側にいてほしいな、小豆には」


~~……。
こ、この天然ウドは本当にもう……。

顔面が熟れたトマトみたいに真っ赤になっていく。どうして、こいつは本当に天然無自覚でこんな凶悪な台詞を吐くのだろうか。ドキドキし過ぎて私の心臓が壊れたら、どうしてくれるんだ。


「よし、出来た。小豆、運ぶの手伝って」
「う、うっせぇ! 一人でやれよ!」

「はぁ……、何を怒ってるんだよ? まぁ、いいけど……」


大樹は軽い溜め息を一つ吐き、一人で料理を食卓に並べ始めた。私が家事を手伝うなんて稀なので、大樹も特に文句を言う様子はなかった。

皿が全部並び終わった頃を見計らって、私は起き上がった。


「あっ……」


起き上がったおかげで、食卓に並ぶオムライスに掛かっている物が見えた。

……真っ赤なケチャップだった。

私が食べたいって言っていたケチャップたっぷりのオムライスだった。しかも、キャベツの千切りも山盛りであった。


「……キノコのホワイトソースにするんじゃなかったの?」

「んっ? あぁ、そうしようと思ったけど、小豆はこっちの方を食べたかったんだろ?」

「そ、そうだけど……」


確かにスーパーでそんな話をした。しかし、それは他愛もない雑談のようなもので、本気でそうしてほしいと思って言った訳ではなかった。それは大樹だってわかっていたはずなのに……。


「君の食べたいモノを作る。それが僕の役目だよ」


あぁぁぁ~、もう!!!
こいつは、こいつは、こいつは……ッ!!
どうして、こう私の心を揺さぶるようなことばかり言うのだ!!

私は手近にあったクッションを全力で大樹に投げつけてやった。クッションをぶつけられた大樹は、何を怒っているのか、と不思議そうな顔をしていた。

私、やっぱり大樹のことが大好きだ……。
もうどうしようもないくらいに……。

誰にも大樹のことを渡したくない、と強く想った。珠樹にも、胡桃にも、誰にも絶対に渡せない……。

……頑張ってみよう、大樹に振り向いてもらえるように。

ケチャップたっぷりのオムライスを見つめながら、私はそう強く決意した。



To be continued...




あとがき

大樹と小豆の長い一日がやっと終わりましたねw
これからもっと短めのオムニバス形式でいこうかなー
なんて考えてますが、実際そうなるかは不明です。

基本的に「大きな樹の下で」は思い付きなんで、
今後どうなるかはサッパリwww

次からは、大樹⇒小豆⇒大樹の一人称ではなく
他のパターンをやるかもしれません。

これも今思い付いたことですw

でも、一つだけ確定なのは、
小豆が大変な目に遭うということw
楽にくっつけるなんて思うなよー、ふふふ……。



2010/8/2 更新
キノコのホワイトソース仕立てオムライスを
実際に作ってみましたよーw なので、リンクはっつけます。
もし、気が向いたら作ってみてください(=^・^=)

・キノコのホワイトソース仕立てオムライス
関連記事
スポンサーサイト
トラックバック0 コメント2
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
No title
コメント水聖 | URL | 2010-08-01-Sun 11:31 [編集]
やっぱり小豆ちゃんがいい!と心から思いました。
もう、可愛いったらありゃしない。
それにしても大樹くん、なんて罪な奴なんだ。天然だから始末が悪いですね、BLの美夜ちゃんもそういうところありますが。
キャベツの千切りができる大樹くん尊敬します。私がやると百切りになるという^^;
大変な目って・・・・
あまり小豆ちゃんをいじめないでくださいね、遠野さん。
Re: No title
コメント遠野秀一 | URL | 2010-08-01-Sun 17:08 [編集]
水聖さん、コメントありがとうございます。

あんな弄り甲斐のある小豆を苛めるな、というのは無理な注文ですw
彼女はこれからも天然×2とか、着ぐるみ小悪魔とかに振り回される運命ですw
残念ながら、もう決定事項ですw
トラックバック
TB*URL
<< 2017/06 >>
S M T W T F S
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -


Copyright © 2017 無色の翼、鳥は何処に向かうのか?. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。