作家志望の不定期ブログです。
無色の翼、鳥は何処に向かうのか?
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大きな樹の下で AF2「素直になれなくて」
2010-06-13-Sun  CATEGORY: Another Future
1000HIT踏んでくれた水聖さんからのリクエストです。

「大きな樹の下でAF」小豆バージョンで
「身長差」ってリクエストです。

リクエストありがとうございました、水聖さん。



……でも、とても長くなってしまいました。
そして、ウッディーの性格が結構凄いことに……。

でも、彼は天然なだけで
積極的じゃない訳ではないんです。
AF1では結構恥ずかしいことをバンバン言ってましたし。

ただ、今回はそれを上回る攻めっぷり……。
S気が覗き見えたり……www

さて、大して意味もない前置きはそろそろ止めましょうか。
本編は↓からです。

・大きな樹の下で



大きな樹の下で -Another Future-
AF2.「素直になれなくて」


爽やかな朝を台無しにする喧しいベルが鳴っていた。
五月蠅いなぁ……。私は目覚まし時計などの言うことを聞く義務などない。いいからさっさと黙れ、この野郎……。

布団の中から目覚まし時計に右ストレートを叩き込んでやる。
……よし、黙ったな。この私に喧嘩を売るなんて百年早いんだよ。

遅刻上等。教師上等。生徒指導室上等。
この私に勝てる奴なんていないんだよ、ふはははは……。
……ZZZ。

「小豆、朝だよ!」

むにゃ~、大樹の声が聞こえる気がする……。
なんだか幸せな気分……。
……ZZZ。

「まぁ、起きてないよね。うん、知ってた。っていうか、また目覚まし壊して……。女の子なんだからもう少し……って、まぁいっか。変な虫が寄ってきても困るし。ほら、起きなよ」

何だか揺れている気がする……?
止めろ……。何人も私の眠りを妨げるのは出来ないのだ~……。

「……揺すって起きるくらいなら苦労はないか。さて、どうしてくれようか。…………よし、前に朝人が言っていた方法をやってみるかな」

んん~、布団を剥ぎ取るなぁ~……。
もう~……、眩しいんだよ、馬鹿ぁ……。
あっ、大樹の手だ、温かいなぁ……。

……?
今、何か唇に触れたような……?
この感じはまるで……。


「――ッ!?」
「あっ、起きた。じゃあ、早く朝ご飯食べてよ」


大樹はいつもの能天気な笑顔で私の部屋から出て行こうとした。本当に何事もなかったかのような能天気な顔だ。


「ちょ、待て! い、今…………、き、ききき、キスを……」

「んっ? 何のことかな?」
「ななな……、何のことじゃねぇよ!? 今、キスしただろ!?」

「さぁ、どうかな? 寝惚けてたんじゃない? いいからさっさと降りてきて、飯を食べな。遅刻するから」


こ、この野郎……、余裕綽々の表情がムカつくッ!!
人が寝ている隙を狙うなんて……っていうか、少しくらい顔を赤らめろよ、この朴念仁!!

あぁ~、もう一気に目が覚めた。
顔が火照って酷いことになっている気がする。
……でも、キスしてくれたことは素直に嬉しかった……。










私は柴崎小豆。
で、私の隣の無駄にでかい木偶の坊は、宇藤大樹。
つい最近までは、ただの幼馴染という関係だった。でも、今は……、その……、恋人同士って関係に変わっていた。

「小豆、手を繋ごうか?」

「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!! そんな恥ずかしい真似できるかよ!!」

「まぁ、それもそっか。通学路のど真ん中だしね」
「…………」

付き合い始めたのはいいのだが、どうにも素直になれなかった。最近は急に積極的になってくれた大樹に振り回されてばっかりだった。

……手、繋ぎたかったなぁ。
いやいやいや、こんな人通りの多いところで手を繋ぐなんて絶対無理だから!! は、恥ずかしいし……。


「今日はちょっと雲行きが怪しいね。雨、降らないといいけど……」
「別に降ったって、折り畳みがあるだろう?」


ぼけーっとしているようで大樹はしっかりしている。
今日だって、忘れずに折り畳み傘を持っていくように、と言ったのは大樹だ。洗濯物だって干してない。

「傘を差したって濡れるじゃないか。それに、梅雨の時期は洗濯物が干せないし、カビとか生えるし、あんまり好きじゃないんだよね」

発想が所帯染みている……。まぁ、大樹らしいけど。

「はっ、梅雨が好きなんて言う物好きいねぇだろう」
「そうだね。あっ、今、何か冷たいモノが頭に降ってきた……」

「鳥の糞か?」

「……女の子がそういうこと言わない。っていうか、そんな訳ないじゃないか。雨が降り出したのかな?」

大樹は空を見上げ、雨粒を確認するように手を掲げた。
私も釣られて空を見上げると、まだ雨は降っていないようだが、今にも雨が降ってきそうな曇天だった。家を出た時より雲の色が濃くなっているような気がした。

空気も湿っているし、確かに今すぐザァーッと降ってきても不思議ではないだろう。学校に着くまでは、このまま降らずにいてほしい。

「よし、急ごうか!」

大樹はふっと悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
ここ最近では滅多に見ることがない年相応の少年らしい顔だった。

昔、まだ私達が子供だった頃は大樹が一番やんちゃだった。私や朝人達を引っ張り回して、いろいろと騒動を起こしていた。今のしっかり者の大樹からは少し想像できないかもしれないけど。

「えっ? ちょ……」
「ほら、急ぐよ!」

突然大樹は私の手をぎゅっと握って走り出した。

なっ……、こいつ、いきなり何をするんだよ!?
こんな人通りの多い道で手を繋いでくるなんて馬鹿なんじゃねぇの!?

大体まだ雨が降っていないのに、走る必要などないではないか。そもそも走るにしても手を繋がなくてもいいはずだ。

……もしかして、ただ手を繋ぎたかっただけか!?
ぅうう~……、あぁぁ~……、もう!! 大樹の馬鹿!!

結局、私は大樹に振り回される運命にあるのだろう。全く迷惑だなと思う一方で、これも悪くないかなと小さく微笑んだ。










「バカップル、ゴーホーム」
「うっさい、黙れ」

教室に着くなり、胡桃に酷いことを言われた。最近の朝の挨拶はいつもこれだった。

……弁護の機会を与えてほしい。
悪いのは私ではなく大樹だ。私はバカップルなんて恥ずかしい存在になるつもりはない。ごく一般的な恋人として慎ましく生きたいと思っている。それをあの馬鹿は……、本当に……、恥ずかしい真似を場所もわきまえずに……。

「今日も大変だったみたいね」
「全くだ……」

積極的になってくれるのは嬉しいんだけど、正直恥ずかしい気持ちの方が強かった。

「でも、本当は小豆も素直に甘えたい?」
「まぁ、私だってもっと素直になれたら……って、違う!!」

「今のセリフ、頂き♪」

胡桃はマスコミが使っているようなボイスレコーダーを見せつけ、邪悪な笑みを浮かべた。

あぁぁ~……、私はまた胡桃に弱みを……。

「っていうか、何でそんなモノを持っているんだよ!?」

「真面目な用途は、自分の演奏を録音するため。不真面目な用途は、まさに今みたいな瞬間を逃さないように」

そういえば、この着ぐるみ娘は世界が認める天才ピアニスト様だった。普段は奇行ばかりする変人なので忘れがちの事実だ。

それより、彼女はいつまでネコの着ぐるみを着続けるのだろうか。夏が近いというのに、暑くないんだろうか。まぁ、胡桃の考えなど私が理解できるはずがない。

「くそぉ……」

「まぁ、でも、付き合っているんだから二人きりの時くらい甘えてもいいんじゃない? あんた、二人きりの時でも甘えられないんでしょ?」

「だ、だって……、そんな素直に出来たら苦労しねぇよ!!」

「……筋金入りの天邪鬼ね、全く」

胡桃に言われるまでもなく充分理解している。
大樹と付き合うようになってから、ずっと素直になろうと思っている。だけど、これまでずっと大樹に反発していたせいもあって、いきなり素直になることに抵抗があるのだ。

本当はもっと素直になりたい……。
だけど、何だか駄目なんだ……。

大樹のあの真っ直ぐな笑顔を見ると、それがあまりに眩しくて、素直に答えることが出来なくなる。彼の笑顔はまるで太陽のように近付くことが出来ない力があるように思える。

「まぁ、素直になったら? ほら、ウチのタマみたいに……」

と言いかけて胡桃は顔をしかめた。

「いや、それは駄目ね……。もし、大樹とタマが付き合ったりしたら、それはもう恐ろしいバカップル領域を形成して、あまりの糖度で悶絶死する人が出るわ」

「あぁ、きっと暴動が起きるな……」

反乱軍のリーダーはもちろん私だ。
あの二人は付き合ってもいないのに、バカップルみたいな雰囲気を周囲に振り撒く。全く忌々しい……。

だが、珠樹みたいに素直になれたら、と思わなくもない。彼女みたいになれれば、大樹の気持ちを真っ直ぐに受け止められるだろう。本当は私だって真っ直ぐに大樹の想いに応えたかった。


「まぁ、とりあえずタマの話は置いといて……。そもそも、どうして小豆は大樹に素直になれないの? 何か理由とかある?」

「大樹に反発する理由……」


……もちろんある。

初めは本当に些細な……、いや、結構……、かなり……、とてつもなく重要なことだった。そのことについて考え出すと今も腹が煮えくり返ってしまいそうだった。

だが、それを他人に話すのは死んでも嫌だ。絶対にからかわれるとわかっている話を誰がするものか。

「小豆♪ 強請りネタはたくさんあるんだから、隠し立てしても無駄だからね♪」

くそぉ……、ネコの着ぐるみを纏った小悪魔め……。今まで誰にも言ったことがないことだったのに……。

「…………差よ……」
「何? 聞こえないわよ」

「……長差よ……」
「もっと大きな声で」

「身長差よ!! 身長差!! あのウドの大木、一人だけスクスクスクスクと身長伸ばして、ずるいじゃねぇか!! 私は毎日牛乳一リットル飲んでいるのに、身長も……、胸さえも大きくならなくて!!
 うがああああああ~~~ッ!! ムカつく、あのウドの大木!! 牛乳なんて一番安いのでいいじゃん、って言われた時は思わず殺してやろうかと思ったぞ!!」

「ぷっ……、あっははははははははは♪ そんな理由でずっと大樹に反発しているの? ふふ……、や、やばい……、笑い死にするわ……。はははははは♪ お、おかしい……」

「笑うなァァァァァァッ!!!」

人の真剣な悩みを大爆笑するとは、この着ぐるみめ……。
戦って勝てる相手だったら一発殴ってやりたい。だが、返り討ちが目に見えている上、その後の仕打ちが末代までの恥になりかねない。だから、ここは怒りを堪えるしかなかった。

「はぁ……、ひぃ……。あぁ……、久し振りに腹が捻じ切れるかと思ったわ……」

そのまま捻じ切れてしまえばよかったにのに……。

「いやぁ~、負けん気の強い小豆らしい理由ね」
「それ以上言ったら殴るわよ」

「まぁまぁ、でも、おかげ一つわかったわ」
「何が?」

「つまり、小豆は大樹より優位に立っていたいのね」

……そ、そうなのかなぁ?
私は思わず首を傾げたが、胡桃は妙に自信があるようだった。
胡桃は人をおちょくって遊ぶことが大好きな困った奴だが、何だかんだ言いつつも最後は助けてくれる面倒見のいい奴でもある。彼女を信じて事態が悪くなった試しはない。ただ、普段の行いがアレなので、なかなか信じづらいのだが。

「小豆、今も大樹に攻められてばっかりでしょ?」

「う、うん……。今日なんか寝起きにキスされたり、いきなり道のど真ん中で手を繋いで来たり……。他にも後ろから抱きつかれて頬にキスされたり、一緒にお風呂に入ろうかって言ってからかってきたりするし」

「はいはい~、惚気はスト~ップ」
「惚気じゃねぇ!!」

私は一方的に攻められている被害者だ。あの野郎は付き合い出した途端にあんな恥ずかしいことばかりするようになって、私の心臓にどれだけ負担が掛かっているかわかっていないのだ。


「今度はあんたから仕掛けるのよ、小豆」
「む……、無理無理無理!! 絶対無理だって!!」

「ウダウダ言うな、いいからやりなさい」


ボイスレコーダーをチラつかせ、胡桃はドスのきいた声で脅してきた。
この着ぐるみ娘は、やる時は絶対にやる女だ。しかも、手段は選ばないどころか一番えげつない方法を取りやがる。


「む、無理だって……。本当に……」
「恋人なんだからキスの一つくらいしてあげないと捨てられるわよ」

「マジですか、姐さん!?」

「マジです。そもそも、あんたにはタマっていう強力なライバルがいるんだから、付き合い出したからって安心してられないでしょ? まぁ、あの子から直接何かするってことはないだろうけどね。
 ……でも、最近小豆が冷たいんだーって大樹が落ち込んでたら、きっとタマは優しく声を掛けるわね。そうしたら、大樹はタマの優しさに惹かれて思わず……」

まさか大樹が浮気をするなんて……。
でも、浮気は文化だって、とある人は言っていた。男ってそういう生き物なの? いやいや、私は大樹を信じてるし……。

でも、珠樹って綺麗で優しいし……。二人が寄り添っている姿は嫉妬するくらいにお似合いに見えるし……。

そんなまさか……。
でも……、あの大樹に限って……。

………………。
…………。
……。


「ど、どどどどど……、どうしよう、クルミもん……!!」

「方法は一つしかないわ、あず太君。大樹は今も貴方からキスされるのを待っている。ならば、やるしかないわ、キスを!!」

「無理だよ!」

私は自分の机を叩き、悔しげに吠えた。
私が大樹にキスをするには、どうにもできない問題があるのだ。その障害があるからこそ、私は今まで自分から大樹にキスを出来なかったのだ。


「だって、だって……、身長差があり過ぎて届かないだよ!!」

「大丈夫!! 方法なんていくらでもあるわ!!」
「ほ、本当……!?」

「えぇ……、私に任せなさい!!」


あぁ、胡桃が今まさに未来から来たネコ型ロボットに見える……。不思議なポケットからひみつ道具を出してくれるかな……。










冷静になって考えてみると、本当にどうかしていたと思う。
クルミもんのひみつ道具を頼るなんて……。

現在、午後八時十六分。
夕食を終えて大樹と一緒に大して面白くもないバラエティ番組を見ているところだった。番組がCMに入ると大樹は席を立ち、ひみつ道具を使う最大チャンスが到来してしまった。

私は迷ったが、胡桃から渡されたソレを使ってしまった。

「……ZZZ」

睡眠薬の威力、恐るべし……。
あの大樹があっという間に眠ってしまった。
っていうか、胡桃は何故、睡眠薬なんて持っていたのだろう。

「や、やっちまった……」

本当にいろんな意味でやらかしてしまった。
睡眠薬を使って眠らせて、その隙にキスをするって、倫理的にどうなの? 恋人同士ですること?

そもそも、この作戦に致命的な欠陥がある。大樹が寝ているのだから、キスされることに気付かない。

また胡桃の口車に乗せられてアホなことをしてしまった。どうして過ちは犯した後でないと気付けないのだろうか。すやすやと無垢な寝顔の大樹を見ていると、罪悪感で胸が締め付けられた。

「だ、だけど、これは確かにチャンス……」

大樹が起きている間では恥ずかしくてキスが出来ないが、寝ている状態なら出来るかもしれない。

そもそも大樹は背が高過ぎるのだ。
キスをしようにも私の身長では届かない。

本当は私だって……、私からキスをしたい……。

いつもキスをしてくれて、たくさんの幸せをくれて、ずっと大樹から愛情を貰ってばかりだった。いつも与えてもらうばかりで、私は大樹に何も返せていなかった。

「……大樹」

ソファで静かに寝息を立てる彼の元へ近付いた。
こうして座っていても、やっぱり大樹は大きい。決して筋肉質という訳ではないが、体格は意外とがっしりしている。

そっと胸板に触ってみると、……思ったより固かった。でも、いつも抱き締められる時に私を包み込む温もりがそのまま感じられた。

もっと触りたい……。
もっと近付きたい……。
もっと側にいたい……。

ちょっとドキドキしながら、大樹の膝の上に座ってみた。あつらえたみたいに私にピッタリな座り心地だ。

「……起きてないよね?」

大樹の顔を覗き込みながら、私は小さく呟いた。
こうして膝に座った状態からだと、彼の顔がとても近かった。

普段はもっと遠い。背伸びしても届かないくらいの距離があるが、今は少し体を寄せるだけでキスが出来る。


「大樹……、寝てるよね?」

「……ZZZ」


私の問いかけに返事はなかった。
まぁ、返事があっても困るんだけど……。

大樹は本当にぐっすりと眠っていた。膝の上に座っても、こんな近くから声を掛けても起きる気配がなかった。私は睡眠薬の力に改めて驚いた。胡桃は一体この薬を何に使っているのだろうか。

……まぁ、それは怖いから考えるのは止めよう。どうせロクでもないことに使っているに決まっている。

私は手を伸ばして彼の頬をそっと撫でた。
そういえば、こうして彼の顔に触れる機会なんて滅多になかった気がする。あっ……、ほっぺた、意外と柔らかい。

ぐにぃ~っと頬を伸ばしてみる。
はははっ、いい男が台無しだ。

こうして大樹の顔を見る機会なんてないから、もっとじっくり見てみたかった。近くで見てみると鼻筋も高く通っていて、まつ毛も女の子みたいに長い。でかい割には童顔っぽいよな、こいつ……。

何だか悪戯心がくすぐられる。油性ペンで落書きしてやりたくなった。

「って、違う違う! 落書きなんて後で出来る!」

当たり前のことだが、やらないという選択肢はない。寝ている人に落書きするのは礼儀だ。

「今は……」

キス、しないと……。
こんなチャンス、滅多にないんだから……。

うぅ……、でも、寝てる隙に唇を奪うのって罪悪感が……。
いやいやいや、まさに今日、それされたばっかりだし! これは正当な報復行為だ! それに、恋人同士なのだからキスくらい当然!!


「た、大樹……」


私は意を決し、ぐっと体を伸ばした。大樹の顔に息が掛かる距離まで近付いた。

キスまであと数センチ……。
だけど、その数センチが果てしなく遠く感じる。

まるで魔女に呪いを掛けられたように身体が石になってしまったようだった。あと少しの距離が埋まらない。石の身体は今にも沈んでしまいそうで、近付くどころか離れて行きそうだった。

この距離を埋めるのに必要なのは、勇気だけ……。
あとちょっと勇気で届くから……。

だから、私にほんの少しの勇気をください……。


「……大樹」


自分のヘタレっぷりに死にたくなった……。

キスは……、まぁ、出来た……。ほっぺに、だけど……。
いや、そのことは凄く嬉しいんだけど、この胸の奥から湧き上がってくる自己嫌悪は何だろう……?
私は大樹の胸に顔を埋めて、思い切り落ち込んだ。

……あぁ、大樹のにおいがする……。
何だか落ち着くなぁ……。

少しだけ勇気をもらえた気がする……。

初めからこうしていればよかった。大樹のにおいと温もりを感じて、不思議なくらいに落ち着けた。

すっと背伸びをして、大樹と額を合わせる。
この温もりがあれば、私は大丈夫……。

瞳を閉じて、そっと唇を合わせた。

私からの初めてのキスだ……。

何だか、やっぱり悪いことをした気分だ……。
今度は大樹が起きている時にしてあげよう。いつもキスしてもらってばかりじゃ悪いし……。何より、私からも大樹にもっとキスをしたかった。


「……小豆、ありがとう」

「えっ……? はァ!? ちょ、何で……!?」


目を開けると、してやったり、と笑顔を浮かべる大樹の姿があった。

ど、どうして起きてやがるんだ、この野郎!?
いつから起きてたんだ!?
っていうか、もしかして今までの私の行動、気付かれてたのか!?


「君からキスしてくれて嬉しいよ、小豆……」


突然ギュッと抱き締められて、首筋に激しいキスをされた。
ちょ……、駄目……。そんな首筋を強く吸われたら……。
……って、違う!!


「ちょ……、コラ!! てめぇ、いつから起きてやがった!?」
「いつからって……、もちろん最初から」

「はっ……?」

最初から起きていたということは、あの恥ずかしい行為の全てが大樹に気付かれていたということだ。

あ、あれが全部……。嘘だろ……?

「まさかアレが本当に睡眠薬だと思ってたの? 胡桃に騙されたんだよ。小豆が睡眠薬だと思ってたのはただの小麦粉。僕はあらかじめ胡桃から話を聞いてたから、眠った振りしてただけだよ」

「あ、あんのクソネコォォォォォォッ!!」

「あっはははははは♪ 僕は胡桃のおかげでいい目に見たから感謝したいくらいだよ。だって、初めて小豆からキスしてくれたんだから」

「くぅぅ……」


本当に幸せそうな大樹の笑顔を見せつけられて、私は怒りの言葉を何も言えなくなってしまった。

騙されたという気持ちはもちろんある。しかし、大樹がこんなに無邪気に喜んだ表情が見られて、黒い気持ちなんて一瞬にして消え去ってしまった。

いつもいつも、大樹の笑顔は反則なんだよ……。


「さて、次は何をしてくれるのかな?」

「な、何もしねぇよ!! っていうか、離せ!!」


大樹は私を抱き締めたまま、私を解放する気がないようだった。何故か身の危険を感じる。

普段はもっと優しく包み込んでくれる大樹の腕が今はまるで万力で締め付けるみたいに力が込められている。絶対に逃がさないという意志がヒシヒシと感じられた。


「そろそろお風呂に入りたいんだけど、もしかして一緒に入ってくれる気になった?」

「げっ……!? お前、まだそんな戯言を……!?」
「戯言でも冗談でもないよ」


とてもキラキラした素敵な笑顔で言い切る大樹。しかし、背後に蠢く邪悪な気配に気付かない私ではない。これはアレだ。ろくでもない目論見をしている胡桃と同じ感じだ。


「だったら、なお性質が悪い!! 離せ!!」
「ははは♪ まぁ、観念するんだね♪」

「ひゃう!?」


耳、甘噛みしやがった!?

大樹は私が怯んだ瞬間、腕の位置を変えて私を抱き上げた。しかも、お姫様抱っこではなく、親が子供を抱えるような感じで。

む、ムカつく……。いや、そうじゃなくて、離しやがれ!!

私は必死に抵抗をしているのだが、大樹の馬鹿力には勝てないのだ。身長差がもう五十センチもあるのだから、本当に子供と大人くらいに力の差がある。

っていうか、この野郎、本気で風呂場に向かってやがる!! 本気で実力行使に出やがったのか!?


「待て待て待てッ!! 私にも心の準備があるんだぞ!!」

「寝込みを襲った罰だよ」
「お前がそれを言うかァァァ!!」


寝込みを襲うのはいつも大樹の方だ。しかも、先程の一件はむしろ私の方が騙されていた。被害者は絶対に私の方だ。


「じゃあ、小豆からキスしてくれたご褒美?」
「そんなご褒美いらん!!」

「ははは♪ 小豆が素直じゃないのは、僕が一番よく知っているから」


聞く耳持たず。私が何を言っても、このウドの大木は止める気はないようだった。
こうなったら、私も形振りを構ってはいられなかった。


「止めろ、馬鹿!! ほ、本気で叫ぶぞ!! 悲鳴をあげるぞ!! 助けて~って言えば、ご近所さんが……」

「大丈夫。玄関には、今日はイチャイチャしているだけなのでご心配なく、って張り紙しといたから」

「用意周到だな、この野郎!!」


こいつ、たまに信じられない暴挙に出やがるな!!
そんな恥ずかしい張り紙は誰かに見られる前に絶対に処分してやる!!


「……だって、小豆が悪いんだよ? いつも素直じゃないから、僕だって心配になるんだ。本当に僕のことが好きなのか不安になるんだ。だから……、だから……」

大樹は表情を曇らせて、不安そうに俯いた。
私の前で大樹がこんな表情を見せたのは初めてだった。

いつも笑顔で私を見守ってくれて、何があっても私を信じてくれた大樹。それが当たり前だと思って、私は何の根拠もなく大樹に甘えていた。だけど、大樹だって人間なのだから不安になったり心配になったりするのが当然だ。

私は素直じゃないから、いつも本当の気持ちを上手く伝えられなかった。普通、恋人がこんな釣れない反応ばかりでは心配になる。

なのに、私は大樹だから大丈夫って……。
そんなはずないのに……。


「大樹……、あの、ごめ……」

「だから、諦めるんだね。小豆は僕のモノだってこと、存分に思い知らせてあげるから」

「……~~ッ!?」


い、今のは、卑怯な不意打ちだ……。
私が一瞬気を緩めた隙に、私の心を撃ち抜くような一言を言うなんて。そんなことを言われたら、もう抵抗なんて出来ないではないか。

あぁ、もう~!!
結局、私はこのウドの大木に振り回されてばっかりだ!!





The End of Another Future Story



あとがき

ウッディー、エロスwww
AF1の珠樹編と比べて、今回は攻めまくりですね。
まぁ、関係が変わると、態度だって変わったりしますよ。

というか、大樹は恋人と一緒にお風呂入りたがる人なんですね。
私の趣味じゃないですよ? 私はどちらかというと
風呂とかは一人でゆっくり浸かりたい派なんで。

ぼーっとしながら、小説のプロット固めるんで、
邪魔スンナー、オラー!? って感じになりますw

まぁ、それはさておき、
「身長差」というキーワードがあまり活きていない気がします。
一応本編で使いたいネタを取っておいたら、
こんなおかしな展開に……。

中途半端になってしまいましたが、
これでよかったでしょうか、水聖さん?

これからも精進しますので、
また懲りずにリクエストしてくれると嬉しいです。
それでは、今回はありがとうございました。
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コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
どうもありがとうございます
コメント水聖 | URL | 2010-06-14-Mon 00:31 [編集]
ツイッターで更新通知を見て早速読みにきました!

遠野さん、書くのはやい!私ならこの長さだと2ヶ月くらいかかってしまいそうです。
いやあ、可愛いカップルですねー。ほほえましい・・・。
タマヒメさんヴァージョンとでは大樹くんが別人のようです。豆柴ちゃんはついからかいたくなるタイプの可愛さだからでしょうか。でも、大樹くん、マメなところは変わりませんね。こんな彼氏がいたらいいだろうなあ。

今回、お姫さま抱っこじゃなく、お子様だっこされる豆柴ちゃんが一番ツボでした。
恋人同士でお風呂っていっても、この二人だと何かほほえましい感じです。(あんまりR指定っぽいイメージがわかない)

読んでる間中、自然に微笑んでしまうようなお話でした。
どうもありがとうございます。

本編では豆柴ちゃんのピンチが続いていますが、どうなるのでしょうか。こちらも続きを楽しみにしています。

すてきな小説をありがとうございました。
Re: どうもありがとうございます
コメント遠野秀一 | URL | 2010-06-14-Mon 01:10 [編集]
水聖さん、コメントありがとうございます。
微妙にキーワード活きてないですが、喜んでもらえて何よりです。

書くの速いと言っても土日使い切りましたけどねwww

それと、大樹は確かに別人みたいになりました。
まぁ、でも、それは小豆が素直でないのがいけないんですw
大樹はバカップル素養の強いので、イチャイチャしたがるんですwww
でも、小豆が応えてくれないから強硬策を取ってしまうみたいな?

彼の場合、恋愛スイッチ入ると
割と積極的になるんですが、なかなかオンにならないタイプです。

本編でもきっと小豆は振り回され続けると思いますwww
No title
コメント | URL | 2010-06-14-Mon 22:22 [編集]
こんばんわ。夢でs^^

今日の朝読ませていただきました+。
コメも送ろうとしたのですが時間が…

なので、遅くなりましたが今から…←

はいwww
可愛いお話ですねww
なんか、ほのぼの…でもなくなっているような気がしますが^^★

まさか、最期の終わり方が
お風呂だとは思いませんでしたね。
小豆ちゃん、の反応が可愛かったです!
そして大樹くんwww
私は応援いたします←

リクエスト小説お疲れ様でした☆
私も楽しく読ませていただきました+。

ありがとうございましたっ!!!
Re: No title
コメント遠野秀一 | URL | 2010-06-14-Mon 22:56 [編集]
夢さん、コメントありがとうございます。

えぇ、まぁ、最後はお風呂ですw
ウッディーが思いのほかに暴走しやがりましたw

小豆は素直じゃないんで、
付き合う前も後も苦労します。
悪いのは彼女ではなく、彼女を翻弄する大樹の方。
こういう時は問答無用で男が悪いんですw

今回はちょっと自信がなかったんですが、
楽しんでくれたなら幸いです。

こちらこそ、いつもご訪問、ありがとうございます。
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